さすがにここまでの旅行記となると
- 2017.11.19 Sunday
- 20:42
下川裕治翁。
我輩が小学校の頃だったか、12万円で何とか世界旅行をするという週刊誌での企画連載があり、毎週それを楽しみに読んでいた。
少し危ない目に遭ったり、少し法律スレスレの手段を使ったりして、財布の重みを何とか保とうとする旅行の仕方に憧れてたが、我輩自身も歳をとってから、あそこまで過酷ではない、いわゆる年齢相応の「プチ貧乏旅行」を楽しんでいる…すべては、下川翁の影響にあると言っても過言ではない。
本屋やアマゾンを覗くと、数カ月に1冊のペースで、翁の本が出される。
店頭で見かければ、迷わずそれをレジまで持っていく。
アマゾンであれば、クリックしたい衝動を少し抑えて、キンドルになったらダウンロードする。
いつぞや日記にも書いたが、電子化するようになって、部屋が随分とすっきりするようになったから、そういう購買行動になってきている。
それにしても、旅行記というのは、その人の性格がよく出ているものだ。
「ひきこもりニート」を自称するさくら剛氏は、KOI2さんの書き方と同じような文字フォントから表現されるギャグマンガ。
ぐんにょり亭氏は、コミポを駆使して、自身の悲惨な出来事を、うさぎの自画像を介しての軽やかなタッチに溢れている。
ゲッツ板谷氏は、もはや言葉そのものをプロレスのエンタテインメントのような天然な見せ方をしている。
下川翁は、所々から出ている。「疲労」と「諦め」がおもしろおかしいのだ。
しまった。
疲れた。
どうしようか。
ため息しかでてこない。
またか…。
どう?
5ページの一回の割合で、こういう胸の底から吐き出されるネガティブな短い文章。
これぞ、下川翁の文章で、我輩はこれはこれで大好きだったりする。w
「さくら剛のもネガティブでは?」
いや、同氏のは、悲惨な状況を全身ギャグに変換するから、その状況に対して同情できないところがある(ヒドィ)。
だが、翁の旅行記を追えば、これらの嘆息にいちいちごもっとも…と頷かずにはいられない。
それがおもしろいのだ。
で、この新刊が出てたので購入した。
ただね…旅行記のはずなんだけど、旅行記ではないんだ。
翁はタイとミャンマーのほとんどの列車に乗った…が、まだいくつか列車に乗っていない。
じゃあ、日本で言うところの「完乗」を…という企画で始めたのだが…うん、もうオチはわかってるよね。
我輩は旅行好きだが、あまり鉄道とかに乗るというものではない。
ただ、鉄道とかを利用するというのであれば、日本はおそらく世界で一番楽な国ではなかろうか。
時刻表は正確無比。
グーグルを使えば、簡単に行きたい駅までの様々なルートを検索することができる。
ただ、タイ、そしてそれ以上にミャンマーにそれを期待するのは、愚かだということで…まあ、なんというか…さっきも書いたが、「旅行記」ではなく、いつ動くか分からない、動いているか分からない、そもそも列車があるのか分からない僻地の鉄道をあらゆる手を使って探して、何とか日帰り(予算とかではなく、この企画の締め切りがあってのこと。他にもカメラマンを連れて行かないので、翁のペースで…って、還暦過ぎてたよね、翁w)するから、駅の雰囲気は少し書きとどめているが、駅周辺についてはあまり詳細に書かれていない。
ミャンマーにいたっては、駅がそこに存在する理由があるのかわからないという感じ。駅舎とは言えない掘っ立て小屋があって、気温は40度を超え、椅子のクッションには南京虫が棲息し、窓から枝が飛び出し顔面にあたり、それでも外国人だと知ると運転席(特等席のようなもの)に座らせてくれたり、それでもやはり湿気がひどく、翁はタイ語はできるがミャンマー語は知らないし、しかもただ「移動」、「乗った」ということだけが重要で、ビールを日の終わりに流し込むこともなく、ただ早めに引き返して…
やはり過酷だったのだろう。
ええ、もう過酷というか、旅行本来の楽しさがまったく感じられませんよ、翁。
水ばかり飲んでいるためか、食欲はなくなり、一日なにも食べることができずに列車に揺られることもよくあった。
翁、まだシベリア鉄道とかなら、旅の楽しみがあると思います。
宿のベッドに体を横にすると、足や手にじんましんまで出てきた。
原因はいろいろとあると思いますが、疲労とストレスが原因かと…。
しかし、乗っても、未乗車区間は残っていた。
もうやめて!とっくに下川翁のライフはゼロよ!
いつか我輩も、「プチ貧乏旅行の勧め」という感じで書いてみたいものだ。