いつか、マレーシアから、「きらら」漫画家が出ることを祈る

  • 2013.12.16 Monday
  • 21:18
JUGEMテーマ:漫画/アニメ


「おや、それは娘さんへのお土産かい?面白い本だよ、それ」


クアラルンプールのUTCバスターミナルの売店で、ある本を買った。
はっきり言って、まさかマレーシアで、自国産の漫画本があるとは信じられなかった。












売店のおばちゃんが、たどたどしい英語でニコニコしながら、代金と引き換えにそう言いながら渡してくれた。
我輩は、「ええ、娘がファンで」と嘘をついた。
娘なぞいないし、結婚してないし、そもそもこの漫画そのものに興味を持ったのは、この不細工オタ男だから、もし内情がバレたら宗教警察にしょっ引かれることも致し方がないかなー…と。
幸い、我輩はイスラームに改宗していないから、セーフだとは思うが、別の意味で心が痛い…というか、根本的な意味で痛いよーw

タイトルは「Lawak Ice Cream Baby Sweet」。
出版社はGALA UNGGUL RESOURCES SDN. BHD.社で、ブランド名はGEMPAK STRAZ
幅広く、色んな漫画本をマレーシアで展開しているようだ。

漫画家の名前はKarya Neko…ネコとあるが、華僑系マレーシア人らしく、随分と若い女性漫画家のようだ。
内容は、仲良し三人組のミント、ヴァニラ、チョコラが学校などで起こす日常的騒動をコミカルに…
何となく、日本における萌え4コマ(「きらら」など)を意識しているのかな…と思える。
あー…でもないな…主役3人組にはそれぞれボーイフレンドがいるという設定だから、むしろ少女ギャグマンガの方向かもしれない。

全部マレー語。
でも、絵の流れから、大体の意味が分かる。
で、普通に面白いんだ、これがw
「きらら」などで、時々意味不明のシュールでもなければ、外し技で強引に笑わすというものでもない、正直言ってつまらない漫画が連載されることがあるが(あえて言わんぞ)、この漫画は、ナチュラルに笑えるから、侮りがたい。
絵は…うーん…頑張っている…というのは分かる。
でもねー…このまま続けていけば、もしかしたら…と思えるんだよ。
この漫画家だけでなく、現地の紀伊國屋書店でも確認したが、なかなかどうして、将来、「きらら」デビューするんじゃないのかなあ?…という漫画本があったりする。

考えてみたら、マレーシアならその可能性があると勝手に思ったりする。

マレーシアは、マレー人を中心としたイスラーム国家である。
ブミプトラというマレー人優遇政策が行われ、多民族他宗教であるが、精神基盤にあるのはイスラームである。
華僑や印僑は正直なところ冷遇されていたが、それぞれがそれぞれの文化基盤において、マレーシアに忠誠を誓い、それぞれの労苦をもって国の中へと根を張っていった。

イスラームを土台とした国家は、文字を優先し、絵を忌避する傾向がある。
サウジアラビア王国等は、人間が印刷されている写真ポスターにモザイクをかけているくらいだ。
偶像崇拝を徹底排除する宗教基盤において、それを非難する資格は、誰にもない。
だがそのために、どうしてもそれに関連して、日常生活におけるベクトルが違ってくる。

テレビゲームやアニメなぞ、偶像である以前に、ムスリムとしてやるべきものではないという考えがある。
イスラーム世界における生活時間の概念として、3つ存在する:「シュグル」「ラアブ」「ラーハ」。

「シュグル」とはいわゆる、労働である。
イスラームでも旧約聖書の「創世記」が聖典として尊ばれているが、アーダーム(クルアーンにおけるアダム)とハッワー(クルアーンにおけるイブ)が楽園から追放され、日々の糧を得るために労働しなければならないということから、労働とは神からの罰、必要悪という考えがあり、誤解を恐れずに言えば、尊ばれていない。

「ラアブ」とはずばり、遊びを意味する。
子供がするものであり、成人がやるべきことではないし、恥ずかしいこととして軽蔑される。
テレビゲームをしたり、漫画を読んだりアニメを観たりすることも、「ラアブ」として扱われる。
子供がそれを楽しむは良いとして、「ラアブ」に値するものを、大人が作るということ自体も、実際のところ軽く見られる。
もっともそれが、お金に結びつくという「シュグル」に属するものである…でなければ、サウジアラビア王国も、職業訓練事業に進出したりしない。

そして「ラーハ」という考え…これはどう翻訳して良いのか…”ゆったりとくつろぐ”という意味が近いが、休息以上にイスラーム教徒として一番重要な生活時間だとされる。
ゆったりとくつろぐ、家族団欒を楽しみ、友人との会話を楽しんだり、礼拝や瞑想、詩作、歌を歌う、楽器を奏でる、おいしい食事を摂る、断食後の祭りを楽しむ、教養を深めるために学問を修める、旅行をして世界への視野を広げる…という、要するに「シュグル」では得られない人生を充実される時間、「ラアブ」のような時間を無駄遣いをしないということが、「ラーハ」の中にある。

当然、漫画を読むという選択肢はない。
ゲームをプレイするということもない。

クアラルンプールを歩くと、確かに台湾や香港などで見られた、オタ系の店は殆どない。
KLのアキバと呼ばれるテナントビルを覗いたけど、












のような店舗が、3店舗もなかった。
しかも、殆ど客の出入りがなかった。
地元のマレー人高校生が、「ワンピース」のゾロのフィギュアに興奮してたが、他の萌え系は埃をかぶってた。












有名な「東京」を模したテナント群にも、1店舗、ねんどろいどとかが売られている店があったが、10分間、前に佇んでみたが、客が入っていく様子がなかった。
店長は華僑らしかったが、暇そうにしてたのが印象的だった。

大多数の前では、ビジネスとして難しいものかもしれないが、イスラームに改宗しない華僑としては、我慢できるものではない。
前述の店長に訊いたところ、10数年前から華僑が中心となって、台湾から漫画やDVD、ゲームなどを買い付けており(…それって…海賊版?…と訊きたかったがやめたw)、そこから少しずつ認知はされるようになったが、まだ少数派だとのこと。
また、売れるためには、マレー人を軸に品ぞろえを考えなければならない…萌え系は、さっぱり売れない…らしい。
でも、小さいながら、やはり強いニーズがあり、華僑系が中心になって、色々とマレーシア製のコンテンツを作っている。
ただ輸入するだけでない。
自分たち独自のモノを作ろうとする意欲と実行力こそ、侮れないものがある。

この漫画も、その流れから出てきたものであろう。

もう一度中身を見ると、マレーシアっぽくない設定がある。
イスラーム国だが、さっき書いたように、ボーイフレンドガールフレンドという設定。
お弁当のシーンがあるが、キャラ弁。
途中でどーみても、セーラー服が…。

日本のコンテンツへの憧れがある。
それは悪いことではない。
そしてその憧れをもって、制作を続けていけば、堂々と渡り合えるコンテンツができる。
少数派であろうが、問題は数ではない。
言葉が判らなくとも、面白いと感じられるその将来性に、強い期待を抱きたい。



…これってある意味、マレーシア版の「坂の上の雲」なのかな。w
 
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